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機械屋さんの裏紙

Mechanical engineers sometimes waste paper.

誰のものでもないのに自分のものと思う

みなさんにはこんな経験はないだろうか。
 
 
学校の裏庭にそびえる大木の陰。
 
名もない川にかかる橋の下。
 
公営駐車場の空き瓶の山。
 
 
そんな誰のものでもない場所を、自分だけのものだと感じることが、僕にはある。
 
 
最近、昼休みになると自分のデスクからどうしても離れたくて、短い時間だけど散歩をするようになった。これまで会社の敷地内を自由に歩き回ることなんてなかったから、それだけで新しい発見をして日々心をときめかせている。そんな僕にお気に入りの場所が見つかった。なんてことはない広場である。そこには雑草が生い茂り、腰掛けるのに絶好の石が一つだけ置いてあった。正面の道路とは等間隔に植えられた木で隔てられ、すぐにひとりになれた。
 
春になり広場には美しい桜が咲き始めた。するとどうだろう。これまで、誰ひとりとして訪れなかった広場に何人もの従業員がやってきた。まさに自分のプライベートスペースを侵されていく気分だった。僕はこの桜がつぼみを膨らませ、雨や風を耐え忍び、寒波にもめげずに花を咲かせたことを知っている。そんなことに優越感を無理やり感じることでしか、突然やってきた彼らを許すことができなかった。僕は誰のものでもない広場を自分のものだと思い込んでいたのだ。
 
来週には桜も散ってしまっていることだろう。そしてまた、広場には僕ひとりしかやって来ない日々が始まるだろう。そんなことを考えると少しだけ穏やかな気持ちになる。